忙殺される日々が続いていた。
陽が昇る前に目覚ましが鳴り、身支度に駆り出される。
外は真っ暗、部屋もまた然りなのでスタンドライトを点けると、昨日の
眠る前と同じような薄暗さが広がる。毎日が仕事と
仕事の延長線上に続いているのを思い知らされる。

わずかな隙間に生じる空白の時間でのみ、その忙しなさから
開放されるのだけど、個人に戻れる余裕がそこにあるわけではない。
公が良しとする価値観に身を深く投じてしまったがため、
スーツを脱いでから床に就くまでに這い上がるのが間に合わない。
摩擦より慣性のほうが強く、僕本来の感覚の領域にまで
会社の車がせり出してくる。風呂から上がり机に向かって、
そういや自分は普段、何を考えていたっけなと考える。
午後22:30頃。

瓶詰めの液体があったとして、個性というのは
それらがワンセットになったものと思っていた。
人間の、自分を頑なに守ろうとする殻が瓶を形作っているに
すぎないと気づいてからは、液体のほうにスポットが向いた。
子供の無垢な精神を社会の海に流して、もう一度海水を
瓶にすくったならば、その液体は大人であるかもしれないが
個人と呼べるだろうか。呼べるだろうか、と考えているうちに
瓶そのものが人間が生み出した幻想でしかないのを思い出して、
あるのはただ莫大な海、ひとりの力ではどうしようもない
自然であることを悟った。賢い人は全部を社会へ明け渡さずに
こっそりと瓶に残しておくんだろう。僕はほとんどを
海へこぼした上に、肝心の瓶をどこかにやってしまった。


それでも、時々「あの作品が観たい」とか、
「次はこんな個展を開きたい」という気持ちが沸き起こるのは
知らないどこかで自分が元気にやっている証拠なんだと思う。
願わくば、もう少し器用に生きたい。

2016.12.29 | | コメント(0) | 日記

12月24日



布団が横向きになっていて目が覚めた。
こんな状態だから毎朝寒く、風邪をひきながら
起きるので喉が痛い。前からずっと痛い。

Go Go Penguinを聴きながら朝食を摂る。
コーヒーの残り(タバコの灰みたいな味だ)と
チーズトーストにする。休日で時間があったので
オムレツも乗っけた。僕が乳製品をよく口にするのは
単純な嗜好もあるけど主にセロトニン対策で、
気持ちをおしまいの方向へ近づけたくないから。
キラキラになりやすい食べ物をなるべく摂取するようにしている。
あとバナナも良いらしい。冬は日光が少ない。

ホームページを更新するために何枚かイラストを
描き下ろしていて、午前中はそのペン入れに手を付けていた。
3枚目に取り掛かったくらいでお腹が空いてしょうがなく
なったので本能に従う。

天神橋筋に向かう。家から歩いて行ける距離。
というか、こういうところに歩いていきたくて
住むところを選んだ。何事も自分の足で歩いて行けるのがいい。

「山の底」というカレー屋に行く。
柚子と大根のキーマカレーが美味しい店だ。おいしいのだけど
ちょっと甘すぎるので今日はビーフカレーを頼んでみたら辛すぎた。
ごはんとルーのバランスもしっちゃかめっちゃかになるくらい
辛くてまいった。僕は辛いものが好きだけど、それは口が好きという
だけの話でお腹はスパイスにすごく弱いのでいつも胃薬と牛乳を
飲んでから食べる。食べながら、あー、これは明日お腹を壊すやつだなと
わかったが頼んだものはしょうがないし何より美味しいので
黙々とスプーンが動く。余談だがこの店はmoonというPSのゲームに
出てきた「ヤマネコ軒」という店屋になんとなく似ている。
狭くて猫目の主人が一人で切り盛りしていて、自分の気分で
仕事をしていそうなそんなマイペースな印象。お酒も置いてるので
夜に行くのも悪くなさげだ。

そのまま商店街をぶらつき、駄楽屋書房に寄る。
カルチャーの匂いがする本がざっくばらんに山積みにされていて
いい加減で親近感を覚えること、この上ない。アート本の
コーナーがあったのでぼーっと眺めていた。改めて感じたことだが
やはり自分は芸術というものにさして関心がない。
絵を描くのでそういった区分の人間としてカテゴライズされがち
なんだけど、僕自身はモネとかゴーギャンを他人事のように見ている。
どちらかというと奇抜でポップなイラストが好きなのかな、
音楽が好きといってもクラシックに興味があるとは限らないのと
似てるかな。でもワーグナーとドビュッシーには好きな曲があるし、
そういえばエゴン・シーレはお気に入りだった。

帰りに駒鳥姉妹店に寄った。
存在は知りつつも行ったことはなかった店で、どうやらコーヒーも
出してくれる本屋のようだが本日は搬入でバタバタしている模様で
カフェ機能は失われていた。棚に目をやるとお堅めな映画評論の書籍が
ずらっと並んでおり、自分は何も考えずに映画をみる手合いなので
これはどうもなぁと思いながら店を後にした。

件のカレーのおかげで早くも喉が渇き、インテリアブックワームカフェに
向かう。これは徒歩ではさすがに遠いなと感じたけど、この辺は
どの通りを歩いても新しい店を発見できるので退屈はしない。
ほうぼうの体でたどり着いたら17日から店内改装のための
長期休暇に入っているらしく、またもやコーヒーにありつけなかった。
人生にこういうことが多い。仕方なく帰りに近所のカフェバー的な
店に寄った。ホットを頼んだらミニマムなチョコケーキが出てきた。

帰宅後、イラストの続きをやる。
20:00時を過ぎてから近所のスーパーにチキンの半額を見に行く。
普段は半額になっているものがビタ一文値引きされておらず
その場でフテ寝しそうになった。何しにきたかわからんくなったので
酒を買う。

カクテルのゴットファーザーが好きで、バーに行ったらほぼ必ず注文する。
ので自分でも作ろうと思ったがバランタインはあるものの
ディサローノアマレットが調達できなかったので杏露酒で代用する。
めちゃくちゃマズい。どうやら酸味があるのがいけなかったみたいで
完全に失敗だった。失敗しない日がない。あるとしたらそれはそもそも
何も起こらなかった日だ。

22:00を過ぎてブログを書き始める。
ただ単に、一日を羅列するだけで、ある出来事のピックアップでもなく
起承転結もない。僕の数ある日々の中でも休日の、その中の一日を
切り取ったに過ぎない。おそらくこの後、もう少し絵の続きを
やってから日付が変わる頃には床に就くと思う。
その前にまた灰のようなコーヒーを飲むかもしれない。



2016.12.24 | | コメント(0) | 日記

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